完璧とも言える、圧巻の演技が終わるのも待たず、観客が立ち上がり、祝福と敬意を込めた拍手を始めた。得点を待つ必要もなかった。銀盤に戻ってきた金妍児が、女王に返り咲いた。
　２年ぶりの大舞台。ＳＰ首位で迎えたフリーの最終滑走。冒頭に高難度の３回転の連続ジャンプを鮮やかに決めたのを皮切りに、全要素を一点の曇りもなく実行した。ミュージカル「レ・ミゼラブル」の力強い曲に負けない美しい滑りで、フリーはバンクーバー五輪でマークした世界歴代最高に迫り、合計点でも大台を軽く超える２１８点に達した。「こんなに高得点になるとは思ってなかった。素晴らしい演技ができた」と本人も驚いた。
　昨年１２月に競技復帰。その後は、以前のように成績に執着する自分でないことを知り、スケートを楽しめているという。記者会見では「これが最後の世界選手権になる気がする」と話し、連覇が懸かるソチ五輪が集大成となりそうだ。「ソチでも成績だけを追い求めない。だが、最高の自分のベストを尽くす」と言い切った。（ロンドン＝カナダ＝時事）（2013/03/17-18:15）